「北朝鮮当局による拉致問題に関する図書等の充実に係る御協力等について」(事務連絡)についての見解
2022年10月24日、学校図書館問題研究会として次の見解を公表しました。
北朝鮮当局による拉致問題に関する図書等の充実に係る協力要請についての見解.pdf
「北朝鮮当局による拉致問題に関する図書等の充実に係る
御協力等について」(事務連絡)についての見解
2022年10月24日
学校図書館問題研究会
文部科学省は、内閣官房拉致問題対策本部からの依頼を受けて、2022年8月30日付で「北朝鮮当局による拉致問題に関する図書等の充実に係る御協力等について」(事務連絡)を各都道府県教育委員会等に出しました。北朝鮮当局による拉致問題への理解促進のため、図書館や学校図書館において拉致問題に関する図書等の充実やテーマ展示を行う等、利用者が手に取りやすい環境を整備するよう協力を依頼するものです。これを受けて、各教育委員会等も所管の図書館や学校に協力を求める文書を出しました。
拉致問題は人権にかかわる重大な問題です。しかし、そのことと、国や教育委員会が特定主題の図書の充実やテーマ展示への協力を求めることとは別問題です。今回の事務連絡はあくまでも協力をお願いしたものとされていますが、国や教育委員会が出している以上、学校においては圧力となりうるものであり、ひいては児童生徒の知る自由を脅かすことにつながるものであると懸念します。
学校図書館は、これまでも時事的な問題について多様な資料を収集し、さまざまな形で提供してきました。こうした活動において、児童生徒の知る自由を保障し、学びを豊かなものにするためには、日本図書館協会が採択した「図書館の自由に関する宣言」にあるように、「権力の介入または社会的圧力に左右されることなく、自らの責任にもとづき、」教育活動や児童生徒のニーズなどを踏まえて、図書館が主体的に取り組むことが必要です。国や教育委員会の要請だからと何も検討せずに、あるいは何らかの紛糾を恐れて、特定主題の資料を充実させたり、展示を行ったり、排除したりすることがあってはなりません。
ただ、学校図書館では、学校司書などの専門職員が配置されていないところもあり、また、配置されていても多くが非正規・非常勤という不安定な立場にあります。こうした文書を受けて管理職から指示があった場合、図書館自らの責任にもとづき判断することが困難なことも少なくないという課題があります。
また、協力の依頼とはいえ、こうしたことが常態化して、知らず知らずのうちに学校や社会がそれをあたり前のこととして受け取るようになってしまったら、とても危険なことです。
これらのことから、私たちは今回の事務連絡を決して容認することができません。文部科学省や各教育委員会等は、図書館の自由についての理解をさらに深め、今後このような要請を行わないことを求めます。
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