文部科学省
「学校図書館の整備充実に関する調査研究協力者会議」
「学校図書館の整備充実に係るこれまでの意見を踏まえた論点整理(案)」及び「同(修正案)」に対する意見
それに対して本会は意見をまとめ、2016年6月22日に文部科学省に提出しました。
2016年6月22日
「学校図書館の整備充実に係るこれまでの意見を踏まえた論点整理(案)」及び「同(修正案)」に対する意見
学校図書館問題研究会
現状と課題、対応策の方向性
(現状と課題)
・学校司書のはたらきがあってこそ司書教諭が十分な役割を果たすことができます。
人材面で「まずは、司書教諭が十分な役割を果たすことが重要」とありますが、そのためには学校司書の働きが欠かせません。学校司書による常時開館、多様で豊かなコレクション形成、的確な資料提供や資料相談の働きがあることで、司書教諭は率先して図書館を活用した豊かな授業を行い、図書館教育を計画的に推進することができます。
・学校司書については、その専門性が発揮できる雇用条件の改善や採用要件などについてもあわせて検討してください。
「学校司書の専門性に学校間等の格差があり、改正学校図書館法の附則を踏まえつつ、水準の確保に向けた取組みが必要」とありますが、格差がうまれているのは、国による十分な財政的支援や施策がない中で、住民の要望を受けて自治体の努力で学校司書が配置されてきたためです。学校司書が専門性を発揮できるための、一校一名の配置や、毎日フルタイムで勤務できる継続的で安定的な雇用条件の確保、採用時の要件等についてもあわせて検討してください。
(対応策の方向性)
・「望ましい基準」を作成するにあたっては早急に答えを出すのではなく、大学や研究団体などと十分な協議を行いすすめてください。またその内容については学校図書館のさらなる充実や学校司書の専門性が保障されるものとしてください。
今までの会議や関係団体のヒアリングにおいて、学校図書館の現状や改善点、学校司書の資格・養成に対して、さまざまな意見や要望が出されていますが、これらの意見をまとめて反映させる「望ましい基準」を策定するのは、約半年の期間では不十分と考えます。この期間内では、ある程度の方向性のみを示し、養成を担当する大学機関や研究団体等と引き続き十分な検討を行ってから、「望ましい基準」を策定してください。その内容についても学校図書館全体の水準や学校司書の専門性が向上するものにしてください。
図書館資料について
〈基本的な考え方〉
・図書館資料については教育課程に直結する資料とともに、児童・生徒の教養を育成するためのさまざまな資料も必要です。
学校図書館法第2条にもある通り、図書館には、教育課程に寄与する資料とともに、児童・生徒の教養を育成するための資料が必要です。児童・生徒が読書の楽しさを実感し、知的好奇心が触発されるような多様な資料も必要です。
〈具体的事項についての考え方〉
・選定基準は各学校の教育活動にあわせたものが必要です。新聞は複数配備が必要です。
図書館資料の選定の基準は、各学校の教育活動にあわせて、教職員全体で確認し明文化した選定の基準を設けることが必要です。校内組織の中で、学校司書も選定に参加し、意見が尊重される配慮を求めます。また、「主権者教育」の充実を進めていくためにも、複数の新聞配備が求められます。
〈今後さらなる検討が必要と考えられる事項〉
・学校図書館の施設設備の充実も重要な課題です。
学校内で児童・生徒が利用しやすい場所に学校図書館を設置するなど、合理的配慮をし、また複数のクラスや授業でも利用できる十分な広さの確保や耐震化など、施設設備の充実や安全性の確保も重要な課題です。
学校図書館の運営を支える専門的人材について
〈基本的な考え方〉
・学校司書の専門性が確保されるよう、雇用条件の改善や一校一名の配置についても言及してください。
学校司書の専門性を確保し教育の水準を向上させるためには、学校司書の一校一名の配置や正規職員としての配置などが必要です。専門性を確保するための条件として示してください。
〈具体的事項についての考え方〉
(学校司書としての資格の在り方、その養成の在り方等)
・学校司書には図書館情報学の知識が不可欠です。現段階では「司書資格」の取得を優先的に義務づけてください。
学校司書が専門性を発揮するためには、必要な図書館情報学の習得が欠かせません。「図書館サービス」(図書館ネットワークを駆使した徹底的な資料・情報提供や資料相談、検索援助など)を日常的に行うことが必要です。このような日常的な図書館サービスがあるからこそ、教師は図書館機能を活用した授業づくりを行うことができます。また、学校司書の仕事を行うには、教育に関する知識や学校教育の流れもよく知っていなければなりません。これらのことから、「司書資格」をベースとして、学校教育に関わる一定の知識を持つことが必要です。
「学校司書の資格の在り方、その養成の在り方等について」で、司書教諭と「公共図書館等の司書となる資格」をどちらも図書館情報学について一定の知識を有する者と明記されていますが、この二つを同等の知識を有する者とすることには疑問があります。司書教諭取得のための単位数5科目10単位と、司書資格の単位数13科目24単位以上とは明らかに違います。また、現在地方自治体における学校司書の採用条件(公立)として(「学校図書館の現状に関する調査」平成27年度発表)、59%の自治体で司書資格を採用条件としており、現段階で専門性を確保するための条件としては、「司書資格」を優先的に義務づけることが現実的です。
・ボランティアでは学校図書館の「運営・管理」に関わることはできません。学校司書の要件として削除してください。
現在、学校図書館のボランティアの多くは、館内の環境整備や読み聞かせなどを行うことがありますが、学校図書館の運営管理にはほとんど関わっていませんし、本来関わるべきではありません。資格や養成のあり方の要件に加えるのは不適切です。
(学校司書の研修について)
・研修については、大学や研究団体や地方公共団体等と十分協議してより豊かな研修プログラムを作成してください。
学校図書館教育がより充実するためには、学校司書自身の専門職員としての力量を高める研修とともに、学校図書館を活用して授業を行う教職員に対しても研修が行われるべきです。どのような研修が望ましいか、現場の学校司書、大学や研究団体・地方公共団体等と十分協議し作成されることが重要です。学校図書館の運営について
〈具体的事項についての考え方〉
(運営体制の在り方)
・学校司書が職員会議に参加するとともに校内研究・研修にも参加することが必要です。
学校司書も教職員の一員として、学校全体が抱えている課題についても共有し、一緒に研修を行っていくことが必要です。そのためには、各校に一名以上のフルタイムで働く専任の学校司書配置が必要です。
(評価の在り方)
・評価のあり方については、さまざまな視点や長期的な視野に基づいて行われるべきです。
教育は数値だけで評価できるものではありません。学校図書館も同様に数値だけでは表せない働きがあります。評価を行う前にまずは、豊かな学校図書館活動が行われるべきです。評価は、数値だけではない、さまざまな視点や長期的な視野に立って行われるべきです。
その他の論点について
(教育委員会による支援、公共図書館との連携について)
・公共図書館と学校図書館のネットワークには、各学校にネットワークの担い手である学校司書が配置されることが欠かせません。
(民間業者と連携について)
・民間事業者への委託については行うべきではありません。
学校図書館の事業内容を民間に委託することは多くの問題があり、限界があります。蔵書を形成することや教職員と連携して授業を行っていくためには、学校の教職員としての位置づけや長期的な視野に立った運営が欠かせません。民間事業者による運営は行うべきでないと明記してください。
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