あなたの学校図書館では、利用者のプライバシーが守られていますか?
残念ながら、学校図書館では子どもたちのプライバシーを守るという意識が、まだ十分に浸透していないように思われます。カードに借りた人の名前や書名が残る貸出方式が採用されていたり、多読者リストが公開されたり、通知表に記載するために貸出数などが担任に提供されたり、という話をしばしば耳にします。学校図書館向けコンピューター・システムには、貸出履歴が活用できることを売りにしているものも少なくありません。
こうした背景には、プライバシー意識の希薄さだけでなく、教育のためには図書館利用記録を積極的に活用すべきだという考え方が根強くあります。しかし、そうした活用は子どもにとって本当にプラスになるのでしょうか? プラスの面があったとしても、プライバシー保護に優先するものでしょうか?
学図研は、結成当初からプライバシーの問題を大切にしてきました。それは、プライバシーを守ること自体の重要性にとどまらず、そのことが子どもたちの知る自由や読む自由を保障し、ひいては子どもたちの学びや育ちを支えることにつながると考えるからです。
1988年に確認された「のぞましい貸出方式が備えるべき五つの条件」の5.には「返却後、個人の記録が残らない」とあります。また、1990年に承認された「逐条解説」では、プライバシー保護の重要性を読書の自由と結びつけながら解説しています。
ところが、その後コンピューター・システムが普及し、「個人の記録が残らない」というのが現状にそぐわないのではないか、という指摘がありました。また、プライバシーが問題になるのは貸出記録だけでなく、予約の記録などもあります。教育的利用についても考えていかなければなりません。
そこで、2007年から「貸出五条件」の再検討が始まり、翌年、読書の自由を保障する観点から改訂版が提案されました。これについて総会、支部、「学図研ニュース」などさまざまな場面で議論されましたが、賛否両論あり、結局採択には至りませんでした。
しかし、残念ながら、今でも学校図書館にプライバシー保護は浸透していません。
コンピューターの導入は、新たなリスクも抱えるようになりました。「貸出五条件」の改訂はハードルが高いので、それとは別の形でガイドラインを検討したらどうかということになり、その一歩としてこの分科会を企画しました。
分科会では、そもそも学校図書館でプライバシーを守るとはどういうことか、から始めます。その後、「貸出五条件」の改訂をめぐる経緯についてもおさらいをします。また、実践報告では、コンピューター・システムの導入にあたって議論を重ね、貸出履歴が残らないシステムを採用した豊中市の事例を紹介します。
これまでの経緯をまったく知らなくてもかまいません。プライバシーの問題について考えてみようという方はぜひご参加ください。学校図書館で利用者のプライバシーを守るためにはどうしたらよいかを、いっしょに考えていきましょう。
(担当:事務局 文責:松井正英)
続きを隠す<<