2006年3月14日
活字文化議員連盟 様
学校図書館問題研究会
代表 飯田 寿美
「文字・活字文化振興法」についての要望書
日頃より学校図書館充実の取り組みにご尽力いただき、心より感謝申し上げます。
私たち学校図書館問題研究会は、学校図書館に関心をもつ個人で構成されている全国規模の研究会です。1985年の結成以来、児童生徒の学ぶ喜びや読む楽しさを支援する学校図書館づくりを目指し、相互に実践・研究を積み重ねてまいりました。
さて、ここ数年、「子どもの読書活動の推進に関する法律」や「文字・活字文化振興法」など、読書にかかわる法律が相次いで制定され、読書環境の充実が進められつつあることに、私たちも大いに共感し、注目しているところです。けれども、こうした動きの一方で、現実の学校図書館では、依然として図書費の貧しさや、司書教諭の形骸化、学校司書の配置条件の悪さ、あるいは学校図書館運営の民間委託など、多くの問題を抱えています。
このたび、学校図書館に関する諸施策、とりわけ「文字・活字文化振興法」とのかかわりにおきまして、私たちの要望を下記のとおりまとめました。
どうか私たち学校図書館にかかわる者の意見を真摯に受け止めていただき、施策の展開に反映していただきますようお願い申し上げます。
記
① 児童生徒の知的自由及び読書の自由を十分に尊重していただきたい。
文字・活字文化はすぐれて思想の自由や表現の自由にかかわることです。そのことに関しては「文字・活字文化振興法」でも、「文字・活字文化が(中略)健全な民主主義の発達に欠くことのできないものであること」(第1条)を確認し、「すべての国民が、その自主性を尊重され」(第3条)るべき旨が謳われています。しかし、読書のような内面的な営みを法律という形で振興することは、ともすれば国民の精神活動を束縛する危うい側面も持ちかねません。民主主義に冠せられた「健全な」という修飾語も、解釈次第では一定の価値観を押しつけることになるかもしれないのです。
学校教育にかかわっては、第3条の3項並びに第8条に、言語力の涵養を図ることが述べられています。私たちは、その際の施策や指導のあり方が、児童生徒の知的自由及び読書の自由に根ざしたものであることが必要であると考えます。「子どもの読書活動の推進に関する法律に対する附帯決議」でも、読書活動推進において行政の不当な干渉を排し、子どもの自主性を尊重する旨が明記されています。「文字・活字文化振興法」にもとづく施策の展開にあたっては、児童生徒の知的自由及び読書の自由を十分に尊重していただきますよう要望します。
② 専任・専門・正規の学校図書館職員を配置していただきたい。
第8条2項に、「司書教諭及び学校図書館に関する業務を担当するその他の職員の充実等の人的体制の整備」に関して、必要な施策を講ずることが述べられています。私たちは、この法律が真に人的体制の整備につながることを期待します。
しかし現実には、学校で発令されている司書教諭はほとんどが授業時間数の軽減がないか、あるいは軽減があってもわずかで、図書館業務に専念できる状態ではありません。また、学校司書が配置されている学校も少数で、しかも兼務であったり短時間勤務であったりと、配置条件が不十分であることが少なくありません。こうした状況では、児童生徒や教員に対して、十分な図書館サービスを提供することはかないません。
そんな中でも、司書教諭や学校司書の積極的なとりくみによって、豊かな学校図書館づくりに大きな成果を上げている報告を聞きます。学校図書館がその機能を発揮し、「学校教育における言語力の涵養に資する環境」の基盤としての役割を果たすために、私たちは人的体制の整備が不可欠の条件であると考えます。学校図書館の運営を担う職員の重要性をきちんと認識し、人的体制の整備として、専任・専門・正規の学校図書館職員の配置を進めていただきますよう要望します。
③学校図書館充実のための物的条件整備について、具体的かつ実効的な施策を実施していただきたい。
第8条2項には、「学校図書館の図書館資料の充実及び情報化の推進等の物的条件の整備」に関して、必要な施策を講ずることが述べられています。私たちは、人的整備とともに、この法律が学校図書館の物的な面でも充実につながることを期待します。
2002年度より小中学校を対象に「学校図書館整備五か年計画」が実施されています。これは文部科学・総務両省が、2002年以降5年間に毎年130億円、総額650億円の交付税措置を策定したものですが、多くの自治体でその交付税が学校図書館整備費として予算化されておらず、蔵書数が著しく増加したという状況にはなっていません。また、この五か年計画では高校が対象となっていません。
まずは「学校図書館整備五か年計画」の交付税措置が、その名目どおり各自治体で学校図書館整備費として確実に予算化されることと、高校図書館並びに盲・ろう・養護学校図書館充実のための新たな予算措置がなされるよう要望します。また、すべての学校図書館の資料を充実させるために、交付税措置以外の施策の検討についても求めます。
文部科学省では、従来の「学校図書館資源共有ネットワーク推進事業」に加えて、新たに「学校図書館支援センター推進事業」を予算化しました。これらの事業が十分な成果を発揮し、全国的に広がっていくことを期待するものです。しかし他方では、個々の学校図書館における予算削減や職員削減を招く側面も持つのではないかという危惧を感じています。学校図書館を運営するにあたっては、当然のことながら、それぞれの学校の教育課程や利用状況を踏まえた資料収集及び提供が求められます。資源共有ネットワークにおいても、支援センターにおいても、各学校図書館でこうした運営が行われていることを前提にし、その上でさらに不十分な面を補う機能をもつものと位置づけて、事業を展開していただきますよう要望します。
以上
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