各地で学校司書が配置されています。ここでは全国委員からの報告を元に、2022年度の現状を紹介します。
≪都道府県≫
都道府県立高等学校では、新規採用があるところと採用のないところの格差がますます広がっています。継続的に新規採用のあるところでは新陳代謝が図られ実践・研究活動も継続、向上していますが、司書職としての採用がないところ、新規採用が途絶えてしまったところでは、研究活動の断絶、後退もみられます。今後のためにも、以前の状況、活動の記録等を残し、軌跡を保存・公開していく必要があります。
・ 福島県は、2022年度、県職員(資格免許職)司書1名を採用しました。2022年1月24日、福島県委員会は、県内の県立高等学校を2018年度の96校から77校(休校含む)に統合再編する学校改革実施計画(10年計画)の後期5年分を発表しました。これに伴い学級減により常勤司書が引き揚げになる、非常勤司書が既にいる学校が常勤司書の配置対象になるなどが予想され、人事・処遇面や蔵書設備の統合校への引き継ぎ等が懸念されます。
・ 埼玉県は、2022年度採用の合格者は8名でした。初めて「就職氷河期世代を対象とした職員採用選考」があり、8名が採用されました。学校には新規採用者5名、氷河期採用者3名の8人の配属予定です。
・ 神奈川県は、2021年度から免許資格職職員採用試験(司書職含む)において教養試験が廃止され、専門試験のみとなりました。3名が採用され、うち2名が県立高校に配属されました。また、経験者枠としての主任司書採用2名は県立図書館への配属となりました。さらに障がい者枠として1名の司書の採用がありましたが、県立図書館に配属されました。
・ 富山県は、県立高校司書の採用試験が5年連続実施され、2022年度は臨任勤務の経験者が1名採用されました。これまでは、正規退職者が出れば正規で補充という形だったため、なかなか7名を超えませんでしたが、今回は拡充に進む採用となり、正規は8名になりました。4月現在で県立高校39校中、正規実習助手8名、再任用2名、臨任実習助手18名、会計年度任用職員(パートタイム)8名、未配置校3校です。特別支援学校12校には会計年度任用職員(パートタイム)2名が巡回勤務しています。
・ 長野県は、2022年度採用の司書採用試験が実施されませんでした。2022年4月時点で県立高等学校82校中(分校3・別キャンパス1を含む)、正規職員配置が44校(うち再任用6校)、会計年度任用職員が38校(うちパートタイム3校)となっています。
・ 三重県は、県の採用試験(司書職)が毎年実施されており、2022年度採用は3名でした。2022年4月から3名とも県立学校へ配属となりました。また、2022年度も県立図書館と学校図書館間の異動もありました。
・ 滋賀県は、2022年度採用の県立学校司書採用選考試験は実施されませんでした。2019年度以降、実施されていません。
・ 京都府は、2022年度採用の京都府公立学校職員採用試験(学校図書館司書)が実施されました。
・ 大阪府は、府立高校の学校司書の採用はありません。大阪市立の高校の府立移管によって、府立高校となった水都国際中学校・高等学校は、国家戦略特区制度を活用した全国初の公設民営の中高一貫教育校なので、学校司書は継続されています。
・ 兵庫県学校図書館協議会の下部組織・兵庫県高等学校図書館研究会「学校司書部会」事務局は、例年行っていた「兵庫県高等学校学校図書館実務調査」の中止を提案しました。「図書館教育のおかれている現状を把握し、携わる職員(主に実習助手)の待遇改善や雇用保障を県教委に求める」ことを目的として行っていましたが、「調査に割く労力に対し、見合った成果がないと判断したため」とのことです。さらに、講演会と研究発表の交互開催だった「兵庫県高等学校司書研究大会」の研究発表も、今後行わないことが提案されました。「県立高等学校では図書館業務のみを行っている人が多くなく、発表の機会が多いと、かえって研究の質が落ちてしまう」、「日々の図書館運営業務を圧迫し生徒に不利益が出てしまうとの判断から」が理由です。3月の司書部会にて、学校司書の調査、研究発表の中止は決定との報告がありました。県研究大会は隔年の講演会のみとなる予定とのことです。兵庫県は、県立高等学校への学校図書館の職員としての採用はありません。
・ 岡山県は2022年度の新採用正規司書2名の内、1名は県立図書館、1名は併設型中高一貫校配属されました。
・ 鳥取県は、2022年度正規の司書が1名採用され、県立高等学校に配属されました。会計年度任用職員の県立高等学校通信課程(事務補助)の募集があり、学校図書館業務担当で資格は問わないというもので、1名採用されました。
・ 島根県は、2022年度県職員(資格免許職)として司書1名が採用され、県立高等学校へ配属されました。また、県立図書館と学校図書館間の異動がありました。
・ 熊本県は、2022年度の学校図書館事務職員採用者は1名で、今回も県立図書館への配属となってしまいました。
・ 鹿児島県は、2022年度の図書館担当職員採用者は1名で、県立高等学校への配属でした。
≪市町村≫
・ 福島県南相馬市は、2012年から学校司書の配置を始め、2022年度は小学校12校中8人が専任、4校が兼務(2名)、中学校は6校で3人(大規模校週3日、小規模校週2日)が兼務しています。すべてフルタイムの会計年度任用職員です。「第三次南相馬市子ども読書活動推進計画」で学校司書の専任化を目標としてかかげ、1年に一人の採用で、徐々に専任にする予定です。市立図書館に学校図書館サポート職員がおり、定例会議を毎週行うほか、先進地視察や外部講師研修、情報共有や連続講演会などの研修を行っています。また、市立図書館で勤務経験のある職員が学校司書として勤務する人事交流を行っています。
・ 東京都杉並区では、2020年度末に起きた任期満了後の継続雇用がされなかった“ふるい落とし”解雇に対する団体交渉の結果、2022年度採用選考から、それまで考慮されなかった区での経験・実績が判断要素となりました。2021年度末満期を迎えた9人の学校司書はすべて再雇用されました。
・ 神奈川県横須賀市では、2022年度、学校司書が全校配置となりました。2012年度からモデルとなる小学校への学校司書の配置を進めていき、2016年度から、市立のすべての小学校(46校)に学校司書を配置しました。中学校では2018年度から23校中8校に配置されましたが、2020年度残りの15校にも配置されることとなりました。
・ 富山県内の15市町村全体で、2022年度は小中学校253校に174名の学校司書が配置されています(2021年度は257校に173名)。公共図書館からの支援や小中学校数の減少により1校専任配置が微増しています。2022年度は1校専任109名、複数校兼務65名です(2021年度1校専任104名、複数校兼務69名)。
・ 三重県津市は、学校図書館司書補佐の職名で、19人が会計年度任用職員として採用されています。1人で中学校2校、小学校2校を兼務しているところが一か所あり、それ以外は中学校区の小中学校1~5校を兼務しています。1日7時間30分勤務で、年間191日の勤務となっています。
・ 三重県志摩市は、2022年度、1名増となり、小中学校13校に5名の会計年度任用職員となりました。1人2~3校兼務です。1日7時間勤務で、年間203日(長期休み勤務なし)の勤務となっています。
・ 大阪市では、学校図書館活用推進事業として、2015年度からこれまで市立小中学校全校に、各校あたり原則週1日、一日あたり6時間、「学校図書館補助員」が配置されていました。2022年度4月より、この「学校図書館補助員」にかえて「学校司書」が配置されます。「学校図書館コーディネーター」4名が教育ブロックに各1名、「主幹学校司書」24名(各区1校、1名専任配置、週4日勤務)、「学校司書」150~160名(1人2~3校を担当、389校は週1日配置)が会計年度任用職員の待遇で採用されます。事務局は大阪市立中央図書館に「学校図書館支援グループ」として設置されています。
・ 大阪府枚方市では、これまで中学校は19名が配置(校区内小学校も支援)、小学校は6名が2校兼務で12校に配置されていましたが、2022年度4月より学校司書25名となり、小学校2校兼務 6名、小中兼務8名(※2022年度よりスタート)、中学校勤務 (校区内小学校を支援) 11名の配置となっています。
・ 兵庫県神戸市では、2014年度にモデル校30校の小中学校に専任の学校司書を配置しました。2019年度から小規模校などで複数校兼務での配置が開始され、複数校兼務の学校司書での全校配置を2023年度に完了することを2021年に正式決定しました。2022年4月現在、全小中学校245校うち224校に学校司書(会計年度任用職員)が配置され、内複数校配置は148校です。
・ 兵庫県尼崎市では、これまでの小学校(2015年度より全校配置)に加え、2022年度、市立全中学校(17校)に、司書もしくは司書教諭資格又は教員免許のいずれかを受験資格として、司書教諭が行う環境整備、開館業務、蔵書管理等の補助を業務内容とする「読書力向上事業業務補助の会計年度任用職員(非常勤事務補助員)」を、9名配置します。2校兼務8名、1校専任1名で、どちらも勤務日数は年間150日以内、週4日、1日4時間の勤務です。小学校は、月曜日から金曜日までの週5日勤務、1日5時間の勤務時間です。
・ 岡山市では、2022年度の新採用正規司書2名は、市立図書館に配属されました。2022年4月に、岡山市では山南中学校と中学校区の小学校4校が統合して、岡山県下初の義務教育学校、岡山市立山南学園が開校しました。現場や市民から学校司書複数配置の要望があり、正規と会計年度任用職員の2名配置されました。2021年度末、正規学校司書1名の定年退職のため正規学校司書は1名減となり、2022年4月から再任用学校司書(週31時間勤務)が1名増えました。配置率が正規学校司書18%、会計年度任用職員75%、再任用学校司書7%となり、非正規率が上がっています。
・ 鳥取県米子市では、パートタイム会計年度任用職員として学校司書3名が採用されました。内、1名が有資格者、2名が資格なしでした。
・ 鳥取県大山町では、フルタイム会計年度任用職員として1名、パートタイム会計年度任用職員として1名の学校司書が採用されました。いずれも有資格者です。
・ 鳥取県江府町では、これまで学校司書の業務は町立図書館司書が兼務で担っていましたが、2022年度から学校専任になりました。なお、2022年度から、江府町立江府小学校と江府町立江府中学校が一つになり、義務教育学校「奥大山江府学園」として開校しています。1~5年と6〜9年の校舎に分かれており、それぞれ一人ずつ学校司書が配置されています。
・ 島根県出雲市では、2022年度会計年度任用職員(学びのサポーター)として学校司書1名が採用され、小学校へ配属されました。
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