学校図書館問題研究会(がくとけん)は、学校図書館に関わる職員や学校図書館に関心のあるみなさんのための研究団体です。

 
お問い合わせフォーム
 

学校図書館にこんな‘人'を (2002)

学校図書館職員の条件については、学校図書館問題研究会ではこれまで「専任・専門・正規」だけを言ってきました。しかし、現状では、自治体によってさまざまな条件の人が配置されてきています。そういう中、2000年の総会において、学校図書館問題研究会は学校図書館の研究団体として、学校図書館に‘人’を置くならこういう条件を備えているべきだ、ということをきちんと表明していく必要があるという提案がなされました。それを受けて、事務局および全国委員会で原案を作成し、2001、2002年と2年間に渡って、総会や分科会で検討を進めてきたものです。

「学校図書館にこんな‘人'を」のご利用にあたって

  • ぜひ、さまざまなところでご活用ください。
  • 必ず「学校図書館問題研究会」の資料である旨を明記してください。
  • 配布などで活用した場合、その情報(集会名・日時・場所・配布部数)を事務局までお問い合せフォームよりおよせください。
 
学校図書館にこんな‘人’を 本文

学校図書館にこんな‘人’を
――学校図書館職員配置の基本的条件――


学校図書館問題研究会

2002年8月7日
学校図書館問題研究会第18回全国大会

 教育改革の問題が国民的課題となり、新しい教育のあり方を考えたとき、ひとりひとりの子ども達を大切にし、学ぶ意欲を受けとめる学校図書館の役割は、今、大きく見直されてきています。全国各地での学校図書館の充実をめざす運動の結果、カギのかかった図書館が開かれ、整備され、子ども達を受け入れる図書館の‘人’がいることで、学校図書館が活気にあふれ、利用されるようになってきました。このような姿は新聞報道でも目にするようになっています。
 とはいえ、学校図書館で子ども達の相手をする図書館職員は、さまざまな形での配置であるため、仕事の上での制約や不安を抱えながら、職務をはたしています。学校図書館問題研究会は、学校図書館に働く職員のあり方として、図書館専任(専任)の専門職員(専門)、さらに正規職員(正規)であるべきであることを、1994年の全国大会総会時に確認しています。この確認の上に、現在のさまざまな形での職員配置に対して、次のようなことを基本的な条件として考え、その実現をめざします。

1 学校図書館の仕事に専念できること

 学校図書館は、毎日いつでも開かれていなければなりません。授業中の利用、授業間の休み時間、昼休み、放課後、時間帯に応じていろいろな使われ方をします。知りたいことや読みたい本を求めてやってくる子ども達に、確実に資料を手渡していくことは、図書館の大切な仕事です。利用者である子どもをよく知っていることも必要です。他の仕事と兼務の状態でなく、図書館の仕事に専念できなくてはなりません。

2 司書資格を持っていること

 図書館の本(資料)と利用者を結びつけるためには、資料の専門家でなくてはなりません。利用者にとって使いやすい本の配列、検索手段の整備のためにも、また自分の知りたいことをうまく表現できない子ども達から、本当に知りたいことを聞き出すためにも、図書館サービスを熟知した職員であることが望まれます。子ども達の知る自由、読む自由を大切にし、利用者の秘密を守る姿勢が、子ども達の知的好奇心や読書意欲を育てます。学校図書館には、資料と資料提供の専門家である、司書資格を持った専門職員が必要です。

3 正規職員であること

 学校図書館は、授業の流れや学校行事との関連で、さまざまな使われ方をします。図書館や資料をどのように使っていくか、授業の流れや学校行事を知るためには、先生との話し合いだけでなく、職員会議に出ることが必要です。また地域の公共図書館との連携、ネットワークなどでも、学校の職員として打ち合わせることも出てきます。学校図書館の職員は、自己の職務に責任を持ち、よりよい方向に改善するためにも、安定した身分の正規職員であることが必要です。

4 1校に1名(以上)の配置であること

 子ども達ひとりひとりのリクエストに応じたり、資料相談などのきめ細かいサービスをするには、利用者である子ども達や先生をよく知っている必要があります。また毎日開かれ、図書館職員がいることで、忙しい先生も授業の合間の時間などで打ち合わせることができ、そこから新たな利用が広がることもあります。一人が複数の学校にかけもちで勤務するのではなく、1校に1名(以上)でなければなりません。

5 フルタイムで働けること

 学校図書館は、始業時から児童生徒の下校の時間まで開いていなければなりません。子ども達への対応、先生との打ち合わせ、図書館のさまざまな仕事、フルタイムで働いていても、図書館が利用されれば時間が足りなくなります。ブックトークをはじめとする本の紹介やブックリストの作成など、図書館を有効に使ってもらうためにやりたい仕事も、時間が限られているためにできない、そういうことが多くあります。時間のためにできる仕事が決まってしまい、結果的に利用のされ方も限定されてしまいます。フルタイムで働ける条件が必要です。

6 継続して働ける職であること

 図書館の仕事は積み重ねです。子ども達への本の紹介や利用の案内も、図書館の状況に応じて変わっていきます。継続して働ける条件があることによって、校内での図書館の理解が深まり、利用に反映されるなど、達成されることが数多くあります。予算に応じての本(資料)の収集、利用状況に応じての書架の配列、古い本の廃棄、検索手段の整備なども、計画を立てて順を追って仕事をしていく必要があります。継続して働けるだけでなく、その職が学校図書館の仕事であることが明確であること、司書として独自に採用されることも大切です。

7 研修の機会が保証されていること

 学校図書館で働く‘人’は資料と資料提供の専門家でなければなりません。そのためには、新しい本(資料)の情報、子ども達の置かれている社会的文化的状況、学校教育の流れの中で学校図書館がどう活用されるのがいいのか、日々の学習が必要です。学校内外での情報交換も大切です。研修の成果は、学校図書館の利用のされ方に直接つながりますし的確な本の紹介や資料の案内につながります。どの図書館でもよい図書館サービスが受けられるように、研修の機会が保証されなければなりません。

 以上あげたことは、学校図書館に働く‘人’のための基本的な条件です。子ども達が大切にされ、学校の中で学校図書館がその機能をはたしていくために、必要不可欠な条件であると考えます。

 
学校図書館にこんな‘人’を 作成の経緯と利用にあたってのお願い

「学校図書館にこんな‘人’を --学校図書館職員配置の基本的条件--」
作成の経緯と利用するにあたってのお願い


学校図書館問題研究会事務局

 上記「学校図書館にこんな‘人’を --学校図書館職員配置の基本的条件--」が、2002年の全国大会の総会で採択されました。

<作成の経緯>

 学校図書館職員の条件については、学校図書館問題研究会ではこれまで「専任・専門・正規」だけを言ってきました。しかし、現状では、自治体によってさまざまな条件の人が配置されてきています。そういう中、2000年の総会において、学校図書館問題研究会は学校図書館の研究団体として、学校図書館に‘人’を置くならこういう条件を備えているべきだ、ということをきちんと表明していく必要があるという提案がなされました。それを受けて、事務局および全国委員会で原案を作成し、2001、2002年と2年間に渡って、総会や分科会で検討を進めてきたものです。

<利用するにあたってのお願い>

 この文書の使い方としては、
  • 教育委員会に対してこんな‘人’が必要だと説明したり、市民団体に理解を求めたりするときの資料とする。
  • それぞれの地域で置かれた‘人’の条件を検討したり、‘人’を置く運動を進めたりするうえでの目標になる。
  • 検討の作業を通じて、会員の共通理解を深めていく。
 などが考えられています。

 なお、この文書を利用するときは必ず次の点にご留意ください。

  1. この文書では学校図書館の役割や活動が見えないので、いきいきとした学校図書館像がわかるような資料と合わせて使用する。 
  2. 自治体によって条件が異なるので、その実情に合わせて説明する。 
 また、今回で‘人’の条件の検討が終わったわけではなく、今後もいろいろな形で意見を寄せていただきながら検討を続け、必要に応じて改訂版を出していく必要がある、という指摘もありました。この文書について、気づいたことや訂正・追加の必要を感じたことがありましたら、ぜひお近くの全国委員あるいは事務局までご意見等をお寄せください。