教育基本法「改正」法案に反対し、子どもの「知る自由」の保障と学校図書館の条件整備を求めるアピール
私たちは、いま国会で継続審議となっている教育基本法「改正」法案について、学校図書館の立場から、以下のような重大な懸念を表明します。
現在、学校図書館が子どもの読書活動に対して果たすべき役割の重要性が、いろいろな場面で指摘されています。読書以外にも、総合的な学習の時間や教科の活動に対する支援、情報教育や利用教育への関わりなど、学校図書館に期待されている役割は多方面にわたっています。
学校図書館の目的は、学校図書館法第2 条にもあるように、「学校の教育課程の展開に寄与するとともに、児童又は生徒の健全な教養を育成する」ことにあります。その目的を実現するため、学校図書館では、一人ひとりを大切にし、児童・生徒のさまざまな疑問・興味・関心から発せられた要求に対して、資料や情報を徹底的に提供することによって応えています。さらには、多様なサービスによって、児童・生徒の潜在的な興味・関心を刺激し、視野や世界を広げる手助けをするなど、児童・生徒の主体的な学習を支えています。
こうした学校図書館活動の基底には、児童・生徒を個人として尊重し、その基本的人権、とりわけ「知る自由」を資料提供によって保障するという原則があります。このことは、日本図書館協会が採択した「図書館の自由に関する宣言」にも、はっきりと謳われています。この「宣言」は、かつて図書館が国民に対する「思想善導」の機関として、国民の「知る自由」を妨げる役割さえ果たしたことに対する反省の上に立って作られました。そして、この原則はとりもなおさず、憲法や教育基本法の理念を実現するためのものです。学校図書館は、児童・生徒の「知りたい」気持ち、「読みたい」気持ちにきちんと応えることによって、子どもの「知る自由」「読む自由」を保障するとともに、平和で民主的な社会の担い手として育っていくのを支援する役割を負っているのです。
いま国会で継続審議となっている教育基本法「改正」法案は、いわゆる「愛国心」の強要や教育行政の強権化によって、個人の価値や自主的精神を尊重する姿勢を相対的に弱めているように見受けられます。現行法第十条にある「不当な支配に服することなく」の意味の変質により、国や地方行政が教育内容に不当に介入してくることも危惧されます。こうした「改正」が、児童・生徒の「知る自由」「読む自由」にどのような影響を及ぼすのかが懸念されるところです。現実に、教育基本法「改正」の動きを含んだ社会の大きな流れの中で、情報規制や監視社会化の傾向が強まり、「有害図書」指定基準の強化など、子どもの「知る自由」を制限しかねない状況も出てきています。
また、現行法第十条2項で規定している国や自治体の条件整備義務が、「改正」法案では事実上免責されるような形になっています。学校図書館が豊かな活動を展開するためには、職員・資料・施設の充実が必要不可欠です。しかし、現状ではそのいずれの面においても不十分なままであり、国や自治体がその責任を果たしているとは言えません。この「改正」によって、学校図書館の条件整備がさらに後退することを懸念します。
以上の理由で、学校図書館に関わる私たちは、教育基本法「改正」法案に反対するとともに、国や自治体が現行教育基本法の理念を実現すべく努力することを強く望むものです。
今年の8 月に長野で開催した、学校図書館問題研究会第22 回全国大会での討議を踏まえて、以上のことをアピールします。
2006 年9 月15 日
学校図書館問題研究会
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