NHK「プロフェッショナル仕事の流儀」の2018年4月23日(月)放送分、
「運命の1冊、あなたのもとへ 書店店主 岩田徹」の中で、
中学校図書館の蔵書に入っている貸出カードが映し出され、
借りた生徒の学年・組・名前・貸出日・返却日が公開されてしまうという場面がありました。
カードが映し出されたシーンは2か所です。
最初のシーンでは、自分の父親が読んだ本がまだ棚にあり、蔵書が刷新されていないこと、
次のシーンでは本が読まれていないことを示すように映されました。
貸出カードのこうした取り扱いは、図書館利用者のプライバシー保護という点から問題があります。
そこで、プライバシーに対する配慮をお願いするとともに、学校図書館の現状と本会の考えを伝えるために、以下の文書を番組制作者宛てに送付しました。
2018年5月7日
NHK「プロフェッショナル仕事の流儀」制作担当者 様学校図書館問題研究会
代表 狩野 ゆき
「プロフェッショナル 仕事の流儀 運命の1冊、あなたのもとへ 書店店主 岩田徹」における学校図書館の利用者のプライバシーに関わる場面について
私たち学校図書館問題研究会は、学校司書や司書教諭などの学校図書館関係者、公共図書館関係者、市民、研究者など、学校図書館に関心をもつ幅広い会員で構成されている研究団体です。
さて、2018年4月23日放送の「プロフェッショナル仕事の流儀 運命の1冊、あなたのもとへ 書店店主岩田徹」において、本に入っている貸出カードが、その本を借りた生徒の学年、組、名前、貸出日、返却日が読み取れる状態で映されました。申し上げるまでもなく、図書館の貸出記録は個人情報であり、さらに個人の思想・信条につながるセンシティブな情報でもあります。そうした個人情報を本人の同意なく提供、公開することは、個人のプライバシーを侵害し、読書の自由を脅かすものです。再放送等の際には、個人名をぼかすなど、プライバシーに対する配慮をお願いいたします。
図書館では、「図書館の自由に関する宣言」(日本図書館協会 1954年採択、1979年改訂)において、「読者が何を読むかはその人のプライバシーに属することであり、図書館は、利用者の読書事実を外部に漏らさない」ことを確認し、その実践に努めてきました。これはすべての図書館に妥当するもので、学校図書館も例外ではありません。
かつての学校図書館では、図書カードや利用者カード(帯出者カード)に貸出記録が残る貸出方式を採用しているところがほとんどでした。1980年頃からプライバシーに関する問題意識が広がり、個人の貸出記録が残らない方式を取り入れるところが増えてきました。本会でも結成以来、利用者のプライバシーを守るために、貸出方式や利用者への連絡方法を工夫し、子どもたちの「知る自由」や「読む自由」を保障する学校図書館のあり方を追究してきました。しかしながら、現在でも児童・生徒のプライバシーに関する意識が、学校全体あるいは保護者や市民の中に十分に浸透しているとは言えず、たいへん残念なことではありますが、利用者の貸出記録が簡単に見られたり、安易に活用されたりする学校図書館が少なくないというのも事実です。これには、学校図書館業務を専任で担当する専門職員の配置が不十分な現状も、大きく関係していると考えられます。
番組の中では、専任の学校図書館職員が配置されておらず、蔵書が古くてあまり活用されていない学校図書館の様子が紹介されました。けれども、最近は学校図書館が児童・生徒の読書活動はもちろん、教育活動においても大きな役割を果たすべきであるという認識が広まっています。専門の学校図書館職員が配置されて、魅力的な選書や児童・生徒へのはたらきかけ、教育活動への支援などを行い、図書館が活発に利用されている学校もたくさんあります。そのような学校図書館で活躍するプロフェッショナルにも注目し、いつか番組でも取り上げていただければ幸いです。
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