学校図書館事務嘱託員制度の継続と充実・発展を」
~「日野市立公立学校図書館あり方検討委員会」への私たちの意見~
2002年11月28日
日野市立公立学校図書館あり方検討委員会 御中
学校図書館問題研究会
代表 海上 和美
「学校図書館事務嘱託員制度の継続と充実・発展を」
~「日野市立公立学校図書館あり方検討委員会」への私たちの意見~
私たち学校図書館問題研究会は、会員の実践活動を持ち寄って検討・理論化し、日常の図書館活動に活かすことで、学校図書館の充実・発展を目指している全国規模の研究団体です。
11月1日付『広報ひの』に掲載されました「学校図書館についてご意見を」について、私たちの意見を簡潔に述べさせていただきます。それは、日野市の「学校図書館事務嘱託員制度」を継続し、より充実・発展させていただきたいということです。これからの学校図書館のあり方についてはさまざまな構想が考えられます。そしてその構想を本当に豊かに実現させていくための鍵を握っているのは、専任・専門の学校図書館職員の配置であると私たちは考えます。
平成2年、日野市が全都に先駆けて、小中学校に専任の学校図書館事務嘱託員を配置されたことには、全国の学校図書館関係者が注目しました。この間、日野市立の学校では、生徒の図書館利用や貸出冊数が大幅に増加し、読書を楽しむ生徒が増えました。それだけではなく、授業や生徒の調べものに対して学校図書館が適切に対応することを通し、より豊かな授業、より豊かな学びが展開され、学校教育に大きな役割を果たすようになりました。まさに鍵がかかったままの学校図書館が、専任の学校図書館職員の手によって、生き生きとよみがえり、本来の機能が発揮されるようになったのです。
また、日野市の施策は、全国各地の多くの自治体が、厳しい財政状況の中で独自に学校図書館職員を配置する端緒となりました。昨年10月、NHK「教育トゥデイ」で紹介された石川県松任市の事例に代表されるように、現在全国各地の自治体において、配置された学校図書館職員がその実践を通して、学校教育に大きな役割を果たしています。本年8月に閣議決定された「子どもの読書活動推進に関する基本的な計画」の中でも、国はこのような自治体ごとの取組みを評価し、学校図書館職員の配置を「促していく」としています。
しかるにその先駆となった日野市において、平成15年から「学校図書館事務嘱託員制度」が廃止され、現行の学校図書館職員が解雇されるということを、私たちは大変憂慮しています。
制度廃止の理由として、「平成15年度から12学級以上の学校に司書教諭が配置される」ことが挙げられています。たしかに平成9年の「学校図書館法の一部改正」により、12学級以上の学校には、2003年までに司書教諭が発令されることになりました。しかしそれは専任の図書館職員の配置ではなく、担任や教科授業を受け持ちながら兼務する「充て司書教諭」の発令です。また11学級以下の学校は除外されています。兼任の司書教諭が発令されても、専任・専門の学校図書館職員の存在がなくては、学校図書館が具体的・積極的に本来の機能を果たしていくことは困難です。そのことは、日野市における13年間の学校図書館事務嘱託員の実践が証明しているところです。「学校図書館事務嘱託員制度」を廃止するのではなく、実践を積み重ねてこられた学校図書館事務嘱託員の方々と新しく発令される司書教諭の方々とが、お互いに協力・協働していくことが、より豊かな学校図書館の構築につながるのだと考えます。先の「学校図書館法の一部改正」の付帯決議においても、「司書教諭と学校司書のそれぞれの役割の重要性と協力」が述べられ、現在働いている学校図書館職員がその職を失うことのないように配慮することが明言されているところであります。
子どもたちの「読みたい」「知りたい」「学びたい」という成長の芽をしっかり受け止め、豊かな心や生きる力を育てるためにも、また、すぐれた教育活動を創り出す先生方の実践を、徹底した資料提供で支えるためにも、いつも子どもたちの思いに寄り添うことができ、いつも先生方の資料要求に応えることができる、専任・専門の学校図書館職員が今ほど注目され、必要とされている時代はないと思います。
全国においても画期的であり、また学校教育における大きな役割を実践によって証明してきた、日野市の「学校図書館事務嘱託員制度」が継続され、さらに充実・発展することを、私たちは強く念じております。
なお、私たち学校図書館問題研究会では、学校図書館職員配置の要件として、別紙(学校図書館にこんな“人”を -学校図書館職員配置の基本的条件-)のように考えています。共に送付させていただきますので是非ともご覧ください。
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