大阪府の橋下徹知事のもと、2008年4月に「財政再建プログラム試案」が出されました。府が出資している団体の大幅な見直しが提案されていますが、その中に府立国際児童文学館の中央図書館への集約、廃止が入っています。国際児童文学館の研究部門の消滅や、貴重な資料の散逸が懸念されます。
学図研常任委員会で、学図研として廃止阻止に向けて何らかのアピール をする必要があるのではという意見が出ました。 そこで次の大阪府議会に向けて、以下の要望書を作成し 、大阪府知事宛に送付しました。
2008年6月13日大阪府知事 橋下 徹 殿学校図書館問題研究会代表
飯田 寿美
大阪府立国際児童文学館の存続について(要望書)
私たち学校図書館問題研究会は、学校司書や司書教諭などの学校図書館関係者、公共図書館関係者、市民、研究者など、学校図書館に関心をもつ幅広い会員で構成されている個人加盟の研究団体です。一人ひとりが自分の実践を持ち寄り、検証し合い、理論化していくことで、学校図書館の発展をめざしています。貴職は、「財政再建プログラム試案」(2008年4月)で、大阪府の公の施設の見直しを掲げられ、そのひとつに大阪府立国際児童文学館の中央図書館への集約を示唆されました。このことについて、学校図書館問題研究会は子どもたちの未来と児童文学研究の発展に対し、たいへん大きな危惧を抱いています。昨今、教育と学校図書館を取りまく状況はめまぐるしく変化し、読書環境の整備を目的とする「子どもの読書活動に関する法律」や、「文字・活字文化振興法」などが制定され、自治体で取り組むべく「学校図書館支援センター推進事業」も推進されています。そのような折に、子どもたちの情操や知的好奇心をはぐくむ児童文学の収集、研究、提供機関である国際児童文学館の移転、廃止は、大阪府民のみならず全国の児童文学に関わる人々にとって、大きな損失です。私たち学校図書館問題研究会が、問題と考える点は以下のとおりです。1、児童文学研究機関の消滅
国際児童文学館は、収集した児童文学、さらには広く児童文化、出版文化を研究する貴重な研究機関です。これを異なる機能を持つ府立中央図書館に吸収してしまうと、研究機関という本来の機能を失わせることになります。
国際児童文学館の研究は今や国内だけでなく、外国の研究施設などとも連携して、児童文化研究の拠点となっています。専門職員の努力によってこれまで培ってきた日本の児童文学、児童文化研究 が停滞してしまいます。
2、児童文学関係資料の散逸
国際児童文学館所蔵の資料が、他に類を見ない貴重な児童文学関係の資料であることは御承知のことと思います。府立中央図書館に集約された場合、約70万冊の資料が一括して所蔵されず、資料の 散逸が危惧されます。
また、資料収集は継続されるところに意味があるにもかかわらず、専門職員もおらず、ただ死蔵されるだけのところには、出版社の納本も篤志家からの寄贈も期待できません。
3、利用者への資料提供サービスの停滞
国際児童文学館はこれまでたくさんの読書推進活動を展開されてきました。お話し会やイベントなど子どもたちに向けてだけでなく、講演会、研修会など多岐にわたり、児童文学やヤングアダルト文学な どに携わる研究者、図書館関係者の大きな拠りどころとなってきました。
私たち学校図書館で働く者も、レファレンスや児童書フェア、研修会などで、学校図書館活動を後ろからしっかりと支えてもらってきました。こうしたサービスが失われることの影響は計り知れません。
子どもたちの豊かな未来のために読書環境を整えることは、重要な生活基盤の整備です。その読書環境を支えてきた大阪府立国際児童文学館の活動は、大阪の誇る文化です。子どもたちの希望を瓦解させる今回の見直し案を再考されるよう、強く望みます。本文を隠す<<